ラフマニノフ 交響曲第1番の楽曲解説

Ⅰ楽章 ニ短調 4/4 序奏部付きのソナタ形式

序奏部冒頭で管が威圧的に奏する3連符 ② は、全4楽章で開始の合図のようにリズムを変えながら繰り返される。それを受けた弦の ③a は、主部でクラリネットが吹く第1主題 ③b の予告に他ならない。

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ラフマニノフの全作品を通じて中心となるのはグレゴリオ聖歌の〈ディエス・イレ〉③。これはマーラーにおいて〈ロマネスカ〉(ド→ソ・ラ→ミ・ファ→ドという4度音程の主題)がイデー・フィクス的に使われているのと似ているが、神を讃える『陽』の〈ロマネスカ〉に対し、最後の審判の恐怖を歌った〈ディエス・イレ〉は、死に直結する『陰』の象徴。この〈1番〉ではベルリオーズの〈幻想交響曲〉のように ③ が原型のまま登場することは無いものの、全ての楽章が〈ディエス・イレ〉の軌道を回る惑星のような構造になっている。

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印象的なチェロのブリッジを経てヴァイオリンが奏する経過主題 ④ と、オーボエが奏する ①c が、歌劇の二重唱のように発展。一旦は ⑤ で愛が成就したかのように壮大に盛り上がる。展開部は第1主題 ③b のフーガ的な展開が力量を証明。既出主題を組み合わせた再現部を経て、〈ディエス・イレ〉を運命主題化した警告が繰り返される長大なコーダによって、悲劇的に閉じられる。

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