ブルックナー 交響曲第4番〈ロマンティック〉変ホ長調 (第2稿・コーストヴェット版)

bruckner 120px〈4番〉の第1稿はブルックナー50歳の1874年11月22日に完成したが、〈3番〉と同様、初演機会の無いまま78年に大改訂に踏み切る。スケルツォの新稿への入れ替えを含む本格的な改訂は年内に一旦終了したが、Ⅳ楽章も短縮・改訂したため、作業は80年にずれ込んだ。これが「第2稿=1878/80年稿」。81年2月20日、ハンス・リヒター指揮のウィーン・フィルによって初演されたのがこの「第2稿」になる。

初演は成功だったが、ブルックナーはその後も、細部に修正を加えた。例えば第4楽章のコーダは、指揮者A. ザイドルの米国初演に際して送った修正案では、循環主題①の回帰を㉒bのように、トランペットとホルンでも吹くように直している。その資料が発見される前に作られたハース版㉒aでは全音符を吹き延ばしているだけだが、後発のノヴァーク版「Ⅳ/2」は㉒bのように採用した。今回のコーストヴェット版はハース版と同じ㉒aなので、トロンボーンとチューバだけが①を吹くことになる。

今回の演奏するのは、コーストヴェットが校訂して国際ブルックナー協会から「第2稿」として2018年に出版された新版だが、上述のようにハースとノヴァークの中間的な選択が多く、どちらかと言えばハース版に近い。元々〈4番〉の第2稿は、ハース版とノヴァーク版Ⅳ/2(=音友版)に大きな違いは無かったから、全体としてはCDや実演で聞き慣れた〈ロマンティック〉を、違和感無くお楽しみ頂けるはずだ。

第1楽章 変ホ長調 2/2 ソナタ形式

後にブルックナーの代名詞のようになる弦楽器のトレモロで開始。ホルン・ソロによる第1主題a ①は第1楽章のみならず、フィナーレも原型のまま再現され、循環主題として全体を纏める。昇り着いたトゥッティで奏される第1主題b ②はブルックナーが偏愛した「2+3」のリズムが特徴で、上声部と低音部が(鏡像)反行型を成す。軽やかに跳躍する第2主題 ③aも複数の声部が合成され、後半の下降音型 ④aも直ぐに反行型 ④bが続く。第2主題 ③aは、③bのようによりポリフォニックに発展、その後半③b’ にはワーグナーの〈トリスタンとイゾルデ〉が引用される。こうしたあたりは、いずれもブルックナーらしい。

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第3主題 ⑤から、うねりが激化。ファンファーレで区切られた後に続く展開部では、既出主題が総動員され、①をコラール化した⑥が壮麗な頂点を築く。

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