ブルックナー 交響曲第4番〈ロマンティック〉変ホ長調 (第2稿・コーストヴェット版)

第4楽章 変ホ長調 2/2 ソナタ形式

静かな歩調で始まったフィナーレも主題⑭はホルンで、オクターヴ下降が特徴。盛り上がった頂点では、全楽器のユニゾンで⑮が轟く。単純だが、オルガニストとして『オクターヴ・ユニゾン』の凄味を体感していた人ならではの豪胆なオーケストレーションだ。第2主題 ⑯も対位法的。ここからコーストヴェット=ノヴァーク版は4/4に変わるが、ハース版は2/2のまま。ハースを版下に作られたノヴァーク版は、手書きで追加したような4/4が書き込まれていたが、コーストヴェットでは最初から印刷されている。これによって迷いが減る。第2主題群の⑰や⑱が陽気な世界に遊んだ後、金管を中心にした第3主題 ⑲が、⑮の威圧的な世界を、より戦闘的な激しさで牽引していく。

bruckner 4th symphony 14

bruckner 4th symphony 15

bruckner 4th symphony 16

bruckner 4th symphony 17bruckner 4th symphony 18

bruckner 4th symphony 19

再現部からコーダにかけて異質なのは、2・4拍子系の中に3拍子の音型が割り込んでくること。⑳は2/2拍子を3分割した例だが、これは敬虔なクリスチャンだったブルックナーが、「三位一体」を譜型的に象徴しようとした、と見るべきだろう。

bruckner 4th symphony 20

そうした中で判断に迷うのが㉑。ラングザマーからは〈ニーベルンクの指輪〉の『魔の炎の音楽』が聞こえるが、そこへの接続が昔から問題視されていた。ノヴァーク版の393小節に手書きで追加された「poco a poco accelerando=少しずつ加速」に従うと、滑らで継ぎ目のないレート変換が可能なのだが、ワーグナー的な移行になり過ぎる。今回のコーストヴェット版では、ノヴァーク版の加速指示を不採用にしたので、演奏としてはハース版に近くなると思う。

bruckner 4th symphony 21

この前後からコーダにかけては『2・4拍子系の音楽=俗世』と『3拍子=神性』の対立をどう突破するか、が解釈上のポイントになる。それを経たコーダは長大な登り坂の中でトランペットが追悼のファンファーレを吹き、『天上のラッパ』トロンボーンが、モーツァルトの〈レクィエム〉の《ラクリモーサ》の転調で導いてゆく。ここが〈ロマンティック〉最大の聴き所だろう。

コーダも版の違いが大きい。コーストヴェット=ハース版はホルンとトランペットのパート㉒aに、循環主題①が無いのに対し、ノヴァーク版㉒bは強奏する。コーストヴェット=ハース版もトロンボーンは①を吹いているのだが、ノヴァーク版に慣れた耳には、やはり主題が弱く感じられる。しかし『神性=3』を重視したブルックナーなら㉒aで良いようにも感じる。今回はバランスに留意し㉒aで演奏してみたい。

bruckner 4th symphony 22a

bruckner 4th symphony 22b

タグ: ブルックナー

関連記事