ストラヴィンスキー 組曲〈火の鳥〉 (1945年版)

stravinsky 千葉フィルが〈火の鳥〉全曲版を演奏したのは、この作品が完成してから100年。2010年のことだ。それから16年、再び〈火の鳥〉に向き合うことになったが、今回は1945年版の組曲である。

ストラヴィンスキーは、オリジナルのバレエ音楽完成後、1911年、1919年、そして今回の1945年の3回にわたって組曲を作成しているが、この1945年版はそれまでの名曲集的な組曲から、ストーリーに沿ったダイジェストへと変わっている。全曲は切れ目なく演奏されるので、〈火の鳥〉のストーリーを感じながら聴いていただけるとよいだろう。

参考として、2010年の解説でも引用させていただいた、R.バックル著『ディアギレフ』(鈴木昌訳・リブロポート刊)の物語の概要を再掲する。

先ず、序奏が夜の恐怖をほのめかす。果樹園の暗がりを、光り輝くようなテーマにのって、火の鳥がすばやく横ぎる。火の鳥は、イワン王子の腕の中でもがく。やがて、月明かりの下、金のリンゴでキャッチボールをする王女と娘たちに、王子はそっと忍び寄り、円舞に加わる。夜が明けると、少女たちは慌てて魔法使いの城に帰ってゆく。後を追うイワンは門をこじあけて、カスチェイの中庭に入る。魔物たちが踊り、カスチェイはイワンを石に変えようとするが、イワンは火の鳥を呼び出し、火の鳥は「子守唄」を踊って、怪物達を眠らせてしまう。イワンは、カスチェイの魂が入っている卵を砕く。イワンと王女は結婚と戴冠を祝う。民謡は感謝の歌になり、大勢の貴族や兵士が舞台の上を行き交う。

導入の序奏①から不気味な雰囲気に覆われる。さまざまな奏法、技法を駆使して作り出される景色は、若きストラヴィンスキーの筆が冴えわたった場面といえよう。

firebird suite fig01

後に続く「火の鳥の踊り」は対象的に軽快。この作品の前半では、特に木管楽器が技巧を駆使する部分と、パ・ド・ドゥのオーボエ②のように朗々と旋律を聴かせる部分が数多くある。これらを聴き逃さないよう注意していただきたい。

firebird suite fig02

「凶悪な踊り」以降は一気に音楽の緊張感とボリュームも上がる。ぜひ「ストラヴィンスキー」ワールドを全身で堪能して、最後の「終曲の讃歌」を浴び切ってほしい。

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