ショスタコーヴィチ  交響曲第12番 ニ短調 作品112

 

第4楽章─《人類の夜明け》 ヘ長調 3/2・3/4拍子

始まって直ぐにホルンが勝利のファンファーレ ⑩ を吹き、大勢が決したことを印象づける。中間部は速いテンポの3/4拍子に転じ、ヴァイオリンが ⑪ で先導。これに木管、ホルン、トランペットのソロが加わって長大な中間部を形成する。この3拍子の円環を変奏的に二周した後、循環形式の定石どおり第1楽章の主要主題 ① ② ④ が盛大に回帰し、勝利感に包まれる。

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ここで重要なのは ② に5拍子の終始型を繋げた ⑫a。階名で読むと「ド・ソ・ラ」。つまりヘンデルの〈メサイア〉の《ハレルヤ・コーラス》⑫b やマーラーの〈巨人〉⑫c 等でさんざん使われてきた“ロマネスカ・バス”の音型そのものなのだ。マーラーが〈8番〉のコーダで、最後の結論として神を賛美するのに使ったのと同じ定型である。

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それはそうだとしても、宗教を排除するのが共産主義。実際にギリシャ正教の教会は革命によって破壊されている。ショスタコーヴィチはこうした史実を踏まえたうえで、この ⑫a をしつこい程繰り返して終わる。怖い人だ。

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